北緯40度 ミルクとワインとクリーンエネルギーの町

平成22年度町長施政方針演述

公開日 2010年03月04日

主要施策 第1 第2 第3 第4 第5 第6 第7


平成22年度葛巻町長施政方針演述(葛巻町議会3月定例会)

 本日、ここに第20回葛巻町議会定例会が開会されるに当たり、今後の町政運営について、私の所信の一端を申し上げます。
 一昨年のアメリカに端を発した世界規模の金融危機の広がりが、今なお、日本経済へ深刻な影響を及ぼしており、急激に悪化した消費や雇用情勢が、我々山村地域の経済や住民生活に深刻な影を落としております。
 昨年秋に、国においては政権交代が行われました。地方に対する影響については慎重に見極めながら地方団体が連携し、対処していく必要があると考えておりますが、このことが町づくりの好機につながるよう情報収集に努めて参ります。先般、国から「地域の活性化と『絆』の再生を図り、地域の自給力と創富力を高める地域主権型社会への転換」を基本理念に「緑の分権改革」が発表されました。正に我が町のための政策ではないかと思える内容であります。これを千載一遇のチャンスと捉え、国や県担当部局と情報交換などを重ねておりますが、ぜひとも、本町がこれに参画できるよう、国・県と連携を密にしながら取り組んで参りたいと考えております。
 さて、本年は、昭和30年の新葛巻町誕生から55年の記念すべき年に当たります。全国に平成の大合併の嵐が吹き荒れ、県内の多くの町村が合併を選択し、由緒ある町村の名が消えていく中にあって、本町は(平成14年に)町民の意向を踏まえて「当面自立の道を選択」しました。私は、平成19年の町長就任後に、さらに一歩進めて「自立の町づくり」を目指すことを表明し、持続可能な町づくりの基盤を確立することを、常に念頭に置きながら町政運営にあたって参りました。
 我が町は、山積する行政課題や難問を抱えながらも「地球規模の課題である食料・環境・エネルギー問題」に貢献する町として、あるいは「ミルクとワインとクリーンエネルギーの町」として、全国から町づくりへの評価をいただけるような自治体として「葛巻町」の今があることについては「選択に誤りはなかった」、「本当に良かった」と私自身感じているところでありますし、町民からもしばしばそのような安堵の声が聞かれるところであります。
 この間、自立のための行財政基盤の強化については、着実に前進してきているところでありますが、一朝一夕で急激に変わるものではなく、まだまだ厳しい状況にあることも確かであります。今後とも取り組みを継続し、町民の皆様が「住み続けたい町」、「誇りを持てる町」と思える夢のあるまちづくりの実現に向け、議員各位並びに町民の皆様と力を合わせて町政運営に取り組んで参る所存であります。
 このような中で迎える合併55周年でありますが、記念式典を挙行し町民の皆様とともにこれを祝い、また、記念行事等を計画しているところであります。
 NHKによる全国放送のラジオ番組をはじめとして、県主催の「いわての森林の感謝祭」や「岩手県畜産共進会ホルスタインの部」など、各種記念行事を町内において開催しながら、積極的に町のPRを展開し、葛巻の未来に向けて力強く第一歩を踏み出す年にしたいと願うところであり、多く町民のご参加をお願いするものであります。
 これより「まちづくりの重点施策」、「行政改革の推進」及び「予算編成」の3点について申し上げます。


【まちづくりの重点施策】

 はじめに、平成22年度のまちづくりの重点施策について申し上げます。
 平成22年度においては、葛巻町総合計画に掲げる「地域の資源を宝に変えて幸せを実感できる高原文化のまち」の実現に向けて、積極的に取り組んで参ります。
 その具体的な取り組みとして、町総合計画後期基本計画に掲げた3つの「夢のあるまちづくり重点プロジェクト」の推進を図ります。1つ目は、総合的な情報通信基盤施設整備であり「住民の安心・安全な暮らしの実現」を図るため、地上デジタル放送の受信環境及び自主放送設備の整備のほか、超高速ブロードバンド・サービスが利用可能な環境を整備し、平成23年4月からのサービス提供に向けて最終の準備を進めて参ります。
 2つ目の、活力ある町を創出していくための「交流・定住人口の拡大プロジェクト」を推進するため、まちなかでのイベントの開催を引き続き支援しながら、中心市街地の活性化に取り組むとともに、併せて国道281号の改良整備と中心市街地の再整備に向けた基本計画の策定について、県と連携しながら取り組んで参ります。
 3つ目の「環境・新エネルギーの推進プロジェクト」では、森林の適正管理と集成材を含めた町産材の利用促進に努めるとともに、林業振興による森林環境保全と新たな雇用機会の創出に取り組んで参ります。
 現下の厳しい雇用情勢を踏まえて、町単独事業を創設し、若年層の雇用拡大、労働意欲のある高齢者の就労機会の創出及び林業担い手育成支援にも取り組んで参ります。併せて国の緊急雇用対策による事業についても積極的に活用し、失業者に対する雇用機会の確保に努めて参ります。
 また、就学前教育の充実に努めるとともに安全で安心な教育環境の整備を図るほか、繰越事業として葛巻小学校屋内運動場を改築いたします。更に「地域活性化・きめ細かな臨時交付金」を活用し、これまで実施できなかった公共施設の修繕等を促進し、公共施設の長寿命化を図って参ります。
 さらに、町の基幹産業であり、厳しい経営環境に置かれている酪農家の経営安定化に向けた対策として、自給飼料の生産拡大につながる助成等を継続実施するとともに新たなモデル事業を創設し、酪農家の経営を支援して参ります。


【行政改革の推進】

 次に行政改革の推進について申し上げます。
 いわゆる「集中改革プラン」として、平成17年度に「第4次行政改革大綱及び行政改革推進実施計画」を策定し、21年度までの5年間、行財政改革に全庁を挙げて取り組んで参りました。
 その結果、職員数を21%、地方債残高を30%削減するという数値目標を設定した「集中改革プラン」でしたが、所期の目標を達成できるものと考えております。また、4年間での行財政改革の効果は、13億7千万円を超えており計画額を上回っているところであります。
 こうした状況にはありますが、平成22年度においては、新たな行財政改革の推進方策について、行財政審議会でご審議をいただきながら、引き続き自立可能な行財政基盤の確立に向けて行財政改革に努めて参ります。
 このためには、職員の意識改革と資質の向上が不可欠であり、岩手県への職員派遣研修、岩手県地方税特別滞納整理機構への職員派遣並びに盛岡地方振興局との人事交流についても継続して参ります。


【予算編成】

 次に、平成22年度の予算編成について申し上げます。
 予算編成に当たっては、財政運営の健全化を推進するため、引き続き、一般的な歳出の抑制に努めるとともに、限られた財源の重点的かつ効果的な配分に努め、経常的な歳入に見合った規模の予算とすることを基本に予算編成したところであります。
 また、国の2次にわたる平成21年度補正予算による経済対策である各種臨時交付金の活用については、直面する町政課題の中から総合的な優先順位を判断したうえで実施事業を厳選したものであります。特にも「地域活性化・きめ細かな臨時交付金」については、今次補正予算に計上しているところであり、実質的には22年度予算として位置付けられるものであります。
 一般会計当初予算については、総額を47億4,426万円と定め、前年度当初予算を1億5,690万円、3.4%上回るものとなりました。前年度の予算規模を上回るのは、平成18年度以来4年ぶりであります。
 また「地域活性化・公共投資臨時交付金」等を財源とした平成21年度からの繰越事業については、総額で14億円を超える規模となるものと見込んでおりますが、今次補正予算でご提案申し上げるものも含めまして、地域情報通信基盤施設、葛巻小学校屋内運動場などがございますが、これらを合わせると総額は62億円規模となることから、前年度予算と比較すると16億円ほど上回るものとなっております。
 以下、本予算案における主な特徴を申し上げます。
 まず、歳入でありますが、町税については、ほぼ前年度並み(約190万円、0.4%減)の4億8,200万円程を計上しております。
 地方交付税については、29億7,000万円とし、国の地方財政計画における基本方針を踏まえ、前年度当初より9,000万円の増額としております。
 町債については、3億6,200万円程を計上しました。このうち臨時財政対策債を除いた普通建設事業費に充当する起債は、8,200万円程に抑制したところであります。
 次に歳出でありますが、人件費については、これまでの行政改革の効果等により約6,200万円減の9億1,000万円、公債費については、約1,700万円減の9億7,000万円とし、総額の抑制に努めたところであります。
 投資的経費については、緊急性や財源性などの視点から、前年度比12%減の約3億1,800万円としたところですが、21年度から繰り越される普通建設事業を含めると、実質的な投資的経費の総額は17億円を超える規模が見込まれます。
 歳入歳出予算の主なものは、以上のような内容でありますが、事業費の重点化や経費の効率化等に努めた結果、財源不足を補うための基金からの取り崩しは行っていないところであります。
 特別会計については、6特別会計の総額で24億3,128万円としたところであり、約1億1,100万円、4.4%の減となるものであります。減額の主な要因は、簡易水道会計の西部簡易水道統合整備事業が完了したことによるものです。
 国保会計については、国保税の落ち込みや国庫支出金等の減少など厳しい財政状況が見込まれることから、安定的な運営を確保するため、一般会計からの繰入措置を拡充したところです。
 老人保健会計については、後期高齢者医療事業移行後の経過措置期間の最終年度となることから、平成22年度末をもって会計を廃止するものであります。
 各特別会計とも財源確保等財政面での課題を抱えていることから、安定的な事業運営のため一層の経営努力を重ねて参ります。
 以上、「まちづくりの重点施策」等の3点について申し上げました。
 次に、町総合計画の体系ごとに施策の概要について申し上げます。



第1は「健康で快適に暮らせるまちづくり」についてであります。

 健康づくりの推進については、健康づくりの基本計画である「健康くずまき21プラン」に基づいた町民の健康づくりを推進して参ります。
 全ての町民が生涯にわたり、心身ともに健康で豊かな生活を送ることができるよう「自分の健康は、自分でつくる」との意識の高揚を図るため、地域担当制による家庭訪問指導の充実をはじめ、特定健診、特定保健指導を行い、併せて、乳幼児から高齢者までの生活習慣病予防に重点をおいた各種健康診査、健康相談及び健康教育を実施し、受診率の向上に取り組んで参ります。
 平成21年度策定の「食育推進計画」に基づき、各年代に応じた食育指導の推進や各種教室を開催するとともに、引き続き、高校生を中心とした「食育講習会」を積極的に開催するなど、健康の基本となる食生活や食文化の普及・啓発を図って参ります。
 また、自殺防止対策は最重要の課題と考えており、新たに「こころの健康づくり推進事業」を実施して参ります。「こころの健康づくり連絡会」の構成員を通じて「小地域見守りネットワーク」等の普及、推進と予防知識の普及・啓発に努めるとともに、相談機関や社会福祉協議会などの関係団体との連携強化による情報収集と相談支援体制の充実を図って参ります。
 病院経営については、全国的な問題となっている医師不足等、病院経営を取り巻く課題が山積していますが、公立病院改革プランを推進し、地域医療を支える中核病院として町民の生命と健康を守る町立病院の使命を肝に銘じ、町民から信頼される安心安全な医療の確保と経営の健全化に努めて参ります。
 その要となる医師の確保についても、電子カルテ導入や医師住宅新築など職場・居住環境の向上を図りながら取り組んできたところであり、引き続き、関係機関等と連携を密にしながら、その確保に全力を傾注して参ります。
 国民健康保険事業については、誰もが安心して医療を受けられる国保制度を維持するため、保険税の収納率向上など財政基盤の安定と各種給付事業の円滑な実施に努めて参ります。
 定健康診査及び特定保健指導を継続し、被保険者の健康の保持・増進を図るとともに、医療費の適正化に努めて参ります。
 後期高齢者医療制度については、新政権においてこれに代わる新制度が検討されておりますが、この動向を注視しながら当面は岩手県後期高齢者医療広域連合と連携して、被保険者が安心して医療を受けられるよう努めて参ります。
 地域福祉については、地域福祉計画に掲げる「共に支え合う福祉のまちづくり」の理念に基づきながら、自殺予防対策として「こころの健康づくり連絡会」の組織基盤の整備を図るとともに、「小地域見守りネットワーク」の構築など、社会福祉協議会を始め、自治会、関係機関や団体等との連携を図りながら地域ぐるみでの福祉の充実を図って参ります。
 高齢者福祉については、高齢化が急速に進む状況の中で「高齢者健康福祉計画」に基づき「社会参加と生きがいづくり」、「健康づくりと介護予防」、「安心のためのサービス充実」を柱に、高齢者が安心して暮らすことができるための支援を充実して参ります。
 介護保険事業については、高齢化率が37%を超える状況の中で、地域包括支援センターの果たす役割は益々重要となっており、高齢者の権利擁護や虐待、介護の問題など総合的な相談体制の充実を図るとともに、盛岡北部行政事務組合の「介護保険事業計画」や「高齢者健康福祉計画」に基づき、歯つらつ栄養教室などの介護予防教室の充実を図るなど、各種介護予防の支援施策を推進して参ります。
 障害者福祉については「障害者福祉計画」に基づき、障がいのある人もない人も共に暮らし、ともに活動できる社会を実現するため、施策の一層の充実を図って参ります。
 地域活動支援センターについては、将来的な基盤づくりに向け設置主体である社会福祉協議会とともに、今後の在り方について検討して参ります。
 子育て支援環境の充実については、安心して生み育てられる環境づくりを推進するため「子育て支援計画」に基づき、乳児保育、延長保育、一時保育及び放課後児童保育の充実など子育て支援策を一層推進して参ります。
 保育園については、就学前教育の重視と小学校との連携を深める観点から、新年度から教育委員会において所管して参ります。葛巻保育園においては「保育所型認定こども園」として幼稚園機能を備えた幼保一体施設として就学前教育の充実を図って参ります。また、葛巻保育園以外においても、保育に欠けない児童の受け入れを実施するとともに、就学前教育の充実に努めて参ります。併せて保育料見直しにより負担の軽減を図り、安心して子育てができる環境づくりを支援して参ります。
 新設される「子ども手当」については、速やかに制度の周知を図り、円滑に制度が運用できるよう事務を進めて参ります。
 住宅の耐震化の推進については、安全安心な住宅で生活ができるよう、耐震化の必要性について啓発し、引き続き耐震診断士派遣事業による簡易耐震診断化率の向上に努めて参ります。診断後における耐震改修工事助成事業についても継続実施して参ります。
 水道事業については、平成17年度から整備を進めてきた西部簡易水道統合整備事業が、本年度をもって完了しました。最新の膜ろ過設備を備えていることから、安全で安定した飲料水の供給が図られたところであります。他の施設についても調査検討し、計画的に整備を進めて参ります。
 下水道事業については、農業集落排水施設及び町整備型浄化槽の普及率の向上に一層努めて参ります。
 このため、新規事業として「高齢者世帯等水洗化普及支援事業」を創設しました。高齢者世帯、障害者世帯をはじめ要支援世帯を対象として、水洗化に要する経費の一部に対し補助金を交付する内容で、要支援世帯の生活環境の改善を図りながら、水洗化率の向上にも結びつけようとするものであります。


第2は「地域で支え合うまちづくり」についてであります。

 消防防災については、装備の拡充や消防団員の教育訓練の充実を図るとともに、青年層の積極的な加入促進に取り組み、消防団活動の充実強化を図って参ります。
 婦人消防協力隊、幼年少年消防クラブ及び自主防災組織に対して引き続き育成指導を行うとともに、地域ぐるみの消防防災体制の確立に努めて参ります。また、宝くじ助成を受けて、新町地区の自主防災組織が行う防災関係備品整備事業に対し助成して参ります。
 消防・防災施設の整備については、多様化する各種災害に対して迅速かつ的確に対処するため、第2分団消防ポンプ自動車及び第6分団小型消防動力ポンプの更新など、引き続き消防施設の更新・整備を重点的に進めて参ります。
 なお、第11分団消防ポンプ積載車が、新年度に国から貸付交付になる予定であります。また、洪水時に土のうの代わりとなる止水シートを各中隊毎に配備することとしております。
 防犯・交通安全については、現在、交通死亡事故発生ゼロ日数を継続中であり、このままいけば今月中に2年を達成することとなります。関係各位のご尽力によるものと感謝を申し上げます。引き続き、交通指導隊を中心に高齢者への交通指導、子どもたちへの交通安全教育などの交通事故防止の活動を推進するとともに、防犯指導隊、防犯協会など関係団体と連携して防犯活動の推進を図り、地域を挙げて安全で安心なまちづくりの推進に努めて参ります。
 消費者行政については、消費者庁の新設に伴い、各自治体の業務として位置づけられたことから、盛岡地区広域8市町村が連携して「盛岡広域消費生活センタ-」として共同実施して参ります。


第3は「環境を守り育てるまちづくり」についてであります。

 一般廃棄物処理については、ごみの再資源化と減量化を推進し、併せてリサイクル活動団体に支援して参ります。
 特にも、ごみの減量化は、老朽化している焼却施設の延命化にも直結する重要な課題であることから、自治会等と連携を図りながら積極的に対策を講じて参る考えであります。
 なお、焼却施設の整備については、盛岡広域圏での一般廃棄物処理施設建設に向けた調査を進めているところですが、なお実現に時間を要することから、施設のトラブル発生等による緊急時の対応等も踏まえ、今後の方向性を検討していく考えであります。
 地域エネルギーの活用については、町独自の新エネルギー導入支援事業を継続し、支援して参ります。
 国では「地域の活性化と『絆』の再生を図り、地域の自給力と創富力を高める地域主権型社会への転換」を基本理念に、人・金・物・エネルギーの動きを変革する「緑の分権改革」構想を新年度から具体的に進めることとしております。本町のエネルギー政策の新たな展開に結びつくものと考えており、この動きを注視し、事業採択に向けて積極的に取り組んで参ります。


第4は「資源を生かした産業を推進するまちづくり」であります。

 農業全般については、配合飼料、肥料価格及び農業用生産資材は、値下がり傾向にあるものの、世界的な経済不況に伴う景気低迷と雇用情勢の悪化、消費の低迷等の影響により、農産物をめぐる消費と価格の動向が下降局面にあるなど、農業を取り巻く情勢も大きく変化し、さまざまな課題に直面しております。
 このことから、経営感覚に優れた農業経営体や担い手農家を育成するとともに、主業型農家と小規模・兼業農家がそれぞれ役割分担のもと、農業経営が将来にわたって持続可能となるよう、低コストな生産構造への転換と総合的な技術・経営支援の強化を図って参ります。
 また、消費者との情報交流、農林産物の販売を促進するため「くずまき産直連絡協議会」との連携を強めて、各地域の特色を生かした活性化を支援して参ります。
 農地については、国民への食料供給と国土・環境保全の基盤であり、地域の人々により維持・管理されている極めて公共性の高い、限りある「地域資源」と認識しております。担い手への面的集積を促進するとともに、耕作放棄地の発生防止と解消に向けた農地パトロールの強化を通じて、その重要性について啓発活動を実施して参ります。
 また、農業者年金制度への加入を推進するとともに、家族農業のパートナーとしての役割分担を明確にした家族経営協定の締結促進に努めて参ります。
 園芸の振興については、多様化する販売対策と、新規作目にも積極的に取り組み消費者に期待される産地化を推進するために「いわて希望農業担い手応援事業」及び「葛巻型農業構築支援事業」を実施して参ります。
 農山村活性化については、学ぶ意欲や自立心、おもいやりの心、模範意識などを育み、力強い子どもの成長を支える教育活動として「子ども農山漁村交流プロジェクト」を農林水産省、文部科学省、総務省が連携して推進しております。
 そのモデル地域である、くずまき高原牧場に整備を進めている「農業体験交流施設」については、周辺環境の整備を進めながら指定管理者制度により施設の有効活用を図って参ります。
 農業振興地域については、優良な農地を良好な状態で維持・保全し、有効利用を図るため、農業の振興地域を明らかにし、土地の農業上の有効活用と農業施策を総合的かつ計画的に推進することを目的として「葛巻町農業振興地域整備計画」の見直しを進めて参ります。
 水田営農については、戸別所得補償制度が創設されることから、本町においてもそのモデル対策である「水田利活用自給力向上事業」及び「米個別所得補償モデル事業」を推進し、創意工夫を活かした取り組みが実施できるよう、水田の利活用、担い手の育成等の将来方向を明確化した地域水田農業ビジョンを作成するとともに「葛巻町水田農業推進協議会」と連携して、水稲の生産調整や調整水田等不作地を最大限に活用した飼料作物の生産拡大を支援して参ります。
 畜産振興については、昨年4月に乳価が引き上げられる一方、飼料価格や農業生産資材の価格が若干下がったものの、依然として厳しい状況と認識しております。特にも酪農家戸数と成牛頭数が減っており、今後の産乳量に影響を与えることが予想されることから、引き続き重点的な支援を実施して参ります。
 本年度において、10年先の葛巻町の酪農・畜産を見据えた「酪農・肉用牛生産近代化計画」の抜本的な見直しを行うこととし、今後の酪農・畜産のあるべき方向性について農家や関係団体としっかり議論し、酪農・畜産振興に寄与する発展的計画となるよう取り組んで参ります。
 乳用牛対策では、良質な粗飼料の安定的確保を基本として、デントコーン種子助成事業を引き続き実施するとともに、新たに自給粗飼料生産拡大モデル事業、削蹄費助成事業、乳用牛導入事業を実施して参ります。
 肉用牛対策では、町内の繁殖雌牛「1千頭達成」の目標実現に向けて、引き続き黒毛和種増頭対策助成事業を実施して参ります。
 くずまき高原牧場に整備を進めている「農業体験交流施設」において、町ホスルタイン共進会のほか、新たに町和牛共進会を開催するとともに、合併55周年記念事業の一環として「第54回岩手県畜産共進会ホルスタイン種の部」を誘致・開催して参ります。
 また、5年に一度の全日本ホルスタイン共進会が北海道で開催されることから、当町からも多くの牛を出品できるよう支援して参ります。このように本年は、各種共進会が数多く開催されることから、「酪農・畜産の町くずまき」を内外に情報発信し、集客力あるイベントとしてもぜひとも成功させ、更に農家が誇りをもって今後の酪農経営に取り組むきっかけとして参りたいと考えております。
 生産基盤の整備については、県営事業「中山間地域総合整備事業江刈地区」が6年計画で着手の予定であります。「一般農道江刈中部3期地区」は、県営事業による調査が継続されることから、新規採択に向け国、県に強く要望して参ります。
 林業振興については、町有林の整備を進めるとともに、間伐や植林・育林等を促進するために、造林、再造林、作業路開設等に係る補助事業を継続して参ります。
 本年は、植樹祭、森林(もり)の恵みフォーラムなど、これまでのイベントに加え、町村合併55周年記念事業の一環として「第4回いわての森林(もり)の感謝祭」の開催を誘致することとしております。町森林組合等と連携しながら、これらイベント等を通じて、森林の持つ機能、役割、魅力を内外に広く情報発信し、「林業の町くずまき」をPRして参ります。
 林業後継者対策では、町森林組合が林野庁の「緑の雇用担い手対策事業」を活用して取り組んでいる林業就業希望者の研修制度と組み合わせる形で、新たに「林業担い手育成支援事業」を創設し、林業就業希望者の研修体制の充実強化を図り、雇用や定住支援対策につなげて参ります。
 林道整備については、県代行林道「鈴峠1号線・2号線、畑福線」の事業が継続実施されます。旧緑資源機構から県に引き継がれた「安孫・平糠線」については、残区間が本格着工となるほか、「鷹ノ巣・鰻沢線」は、全体計画の調査設計が予定されています。
 治山事業については、田部岩瀬張地区の土留め及び触沢地区の谷止め工事が、平成21年度で完了します。継続事業として、七滝、田屋両地区の谷止工事及び上外川、畑両地区の保安林整備が計画されているほか、新規事業として平庭 地区の保安林整備が予定されております。
 商工業の振興については、引き続き「まちなか活性化協議会」によるイベントを中心とした中心市街地の活性化の取り組みを支援するとともに、県と共同して国道281号の改良整備と中心市街地の再整備に向けた基本計画の策定に向け取り組んで参ります。
 また、新たな雇用の場の創出を図るため、盛岡広域8市町村で設置した「在京盛岡広域産業人会」等と連携し、情報収集に努めながら引き続き企業誘致に取り組んで参ります。
 観光振興については、子ども農山漁村交流プロジェクト等による体験教育旅行の受入を推進するため「農業体験交流施設」などを活用した新たな体験交流プログラムの開発を支援するとともに、くずまき高原牧場や森のこだま館などの既存施設を生かした魅力ある体験・滞在型観光の振興を図って参ります。
 定住対策については、平成20年度に創設した土地提供者を登録する制度に、引き続き農家等のご協力をいただくとともに、土地取得者や若者定住者に対して奨励金等による支援を実施するほか、雇用対策とも連携して定住しやすい環境づくりを充実させて参ります。
 また、町ぐるみでの定住者の受入体制を整備するため、すでに体験・受け入れ事業に取り組んでいる第3セクターや林業関係団体等と連携しながら、全町的な受け入れ態勢の強化に取り組んで参ります。
 地籍調査事業については、昭和45年度から調査を進めてきた一筆地調査が21年度をもって終了しました。地権者並びに関係者に改めて感謝を申し上げます。なお、地籍調査事業は登記事務等を残すのみとなり、平成23年度で事業の全てを完了する予定であります。今後は成果品の適正な管理に努めるとともに、地籍情報の有効活用に全庁で取り組んで参ります。


第5は「人と文化を育むまちづくり」についてであります。

 教育の機会均等とその充実については、かねてから強く訴えてきた施策の一つでもあります。私は、次世代を担う本町の子どもたちには、大いなる夢と希望を持ち、明るくたくましく成長してほしいと願っております。そして、課題を的確に捉え、自ら解決に向け努力することや時にはがまんすること、他人への気配りなど心豊かな人間らしさを総合的に身につけることができるよう、家庭はもとより学校、地域でしっかりと支えていかなければならないと考えております。
 また、町民の皆様が自己を高める努力をすることにより、日々の生活に潤いを覚えていただけるよう生涯学習推進にも積極的に取り組んで参ります。
 就学前教育の充実については、すべての幼児施設において、子どもの発達段階に応じた教育と保育を総合的に進めるために、町立の保育所と児童館を教育委員会へ移管し、更に町立小学校との交流・連携を深め、保護者の子育て相談へ の適切な対応強化を図ることにより、小一プロブレム解消など円滑な学校教育への移行に努めて参ります。
 小中学校教育では、引き続き自然環境や産業構造とその従事者など地域の総合的な資源を生かした体験学習を積極的に学校教育の中に取り入れて参ります。
 教育環境整備については、葛巻小学校屋内運動場改築工事を行いますが、この施設は学校教育施設としての利用に加え、学校開放型の総合文化施設や災害時における緊急避難施設など多目的に利用できるものであります。また、平成23年度に予定する葛巻小学校屋内プール改築工事の実施設計を行います。
 昨年は、新型インフルエンザの大流行が大きな社会問題ともなりましたが、考えさせられたのは食事をしっかり摂り基礎体力を維持することの大切さです。楽しみながら食育を推進する観点からも、学校給食では姉妹町村の沖縄県北中城村との産物交換による学校給食沖縄デー、地元産物による学校給食葛巻デーにも取り組んで参ります。
 高等学校教育の振興については、今後とも葛巻高等学校教育振興協議会に対して補助金を交付し、通学補助制度をはじめ特色ある活動などに助成することにより、魅力ある学校づくりを支援しながら、その存続発展に展望を切り開いて参ります。特に、平成22年度は、県が第二次県立高等学校整備計画を策定する予定であり、地域と連携した教育活動の重要性を力強く訴えて参ります。
 生涯学習の充実については、生涯学習推進本部を中心に「町民まなびい学園」を開設して、町民の皆様の多様な学習要望にお応えして参ります。
 公民館事業では、サブセンター等11施設に合併処理浄化槽設置によるトイレの水洗化と排水処理施設整備、4施設のバリアフリー化、9施設の小破修繕を実施します。協働のまちづくりの一環として地域の方々のお力添えによって地区センターの屋根の塗装塗り替えを行うなど、地域に快適なコミュニティ推進の場を提供するとともに、施設の延命化にも努めて参ります。
 青少年の健全育成については、町青少年育成ネットワーク等との連携強化、くずまき高原牧場における子ども長期自然体験村等の体験活動の奨励と支援、姉妹町村である沖縄県北中城村からの中学生訪問団の受け入れによる交流を進めて参ります。
 生涯スポーツ・レクリエーションの推進については、町民の誰もが、それぞれのライフスタイルに応じて、いつでも・どこでも・いつまでも気軽にスポーツを楽しむことができる生涯スポーツ社会の実現に向け、スポーツをしたり、観たり、ボランティアとして関わったりすることができる環境づくりを推進して参ります。
 そのため、NPO法人葛巻町体育協会と連携を強化し、町体育施設の環境整備を進めるほか、町民総合体育大会等各種大会を継続開催するとともに、各種講習会や研修会を通じて、スポーツ団体の育成、強化を図って参ります。
 文化の創造と継承については、より多くの町民の皆様から日常生活の中に文化活動を取り入れていただき、日々進化発展する文化を身近に感じていただくことにより、その創造と継承につなげて参ります。町文化協会の活動についても支援して参ります。
 文化財保護活動では、2年連続して「車門明神穴」の学術調査を実施し、県内でも数少ない高標高地洞穴であることや洞穴生物の棲息状況が明らかになりました。今後も調査を継続し、町内外の関心を呼び込みながら地域活性化にもつなげて参ります。また「町郷土資料館」の老朽化が著しいことから、今後の施設のあり方について調査検討して参ります。


第6は「交流を広げ、誇りをもって情報発信するまちづくり」であります。

 国・県道整備については、広域的な連携・交流・地域振興につながる安全な道路整備を国・県に対して要望して参ります。
 国道281号では、通常の維持修繕をはじめ、大坊地区の拡幅工事、葛巻地区流雪溝の補修継続、小屋瀬地区落石防護工事の継続、また、国道340号では、道路維持修繕、急カーブ・歩道整備等の継続が予定されております。主要地方道一戸葛巻線では、急カーブの改良促進等引き続き要望して参ります。
 平庭道路の整備については「平庭トンネル早期着工・完成促進住民大会」の継続開催を含め関係する市町村とともに、引き続き早期実現に向けて要望して参ります。
 町道については、豊かな生活環境の創造と地域の活性化を推進するため、渋谷地線を継続工事とし、早期完了に努めて参ります。また、新規路線として、小屋瀬塚森線、江刈保育園線、佐ノ渡線、塚ノ沢線、長路2号線の整備に着手して参ります。
 バス交通対策については、バス事業者や住民、各種団体等と連携した利用促進の取組を推進するとともに、葛巻線、吉ヶ沢線の2路線の広域生活路線については、引き続き関係町村と連携し、バス事業者に対して県の補助金を活用した補助金を交付して、路線の維持を図って参ります。
 地域情報化については、平成20年度から3カ年計画で実施している地域情報通信基盤施設整備の最終年度として、地上デジタル放送への完全移行及びブロードバンド・ゼロ地域の解消を図るための加入者側基盤の整備を進め、町内全域におけるテレビ難視聴を解消するとともに、高度情報化社会の利便性を享受できる環境を構築して参ります。
 また、世帯数レベルで1割を切った携帯電話不感地域の早期解消に向け、引き続き関係機関等へ働き掛け、地域情報化の更なる充実に努めて参ります。


第7は「協働のまちづくり」であります。

 まちづくりへの住民参画の推進については、引き続き地域担当職員による情報提供や町政懇談会等を開催して住民参画機会の拡充に努めるとともに、平成20年度に創設した「協働のまちづくり事業」において、町外に在住の町出身者の方々と地域との絆を強めるための事業や、集会施設の機能向上を新たなメニューとして追加し、コミュニティの活性化に向けて、自治会等の主体的な取り組みを支援して参ります。
 以上、平成22年度の施策の概要を申し上げました。
【結びに】
 昨年は、葛巻高校郷土芸能部の全国高校文化祭出場、商工会青年部のふるさとCM大賞受賞がありました。去る1月には、吉ヶ沢小学校が壁新聞全国コンクールにおいて入選し、東京で開かれた全国交流会での子どもたちによる投票で「子どもファームネット大賞」に輝きました。また、小屋瀬少年消防クラブが、消防庁長官から優良少年消防クラブとして全国表彰されることが決まり、今月下旬に東京での表彰式に子どもたちが出席する予定であります。
 今は全てにおいて厳しい社会経済状況にあるわけですが、まさにそういった中で、葛巻町のこれからを担うであろう若い力が、次々とその強い絆を生かした行動で、葛巻を思う一体感の醸成など将来への希望を町民に抱かせてくれています。本当にうれしい限りであります。
 私は「夢しか実現するものはない」と言い続けておりますが、こうした人材を輩出する力を持つ我が町の人々が、力を併せて町づくりに取り組むならば、夢を叶え「住み続けたいと思える町」、「誇りを持てる町」そして「町民が生涯現役でいられる町」、そういう町づくりが実現できるものと確信しております。
 はじめに申し上げましたとおり、本年は、我が町が「町村合併55周年」を迎える記念すべき年であります。本年が、我々にとって、町の歴史を振り返り「先人のたゆまぬ努力」に改めて敬意と感謝を捧げる機会となり、全国に誇れる葛巻の価値を再認識し、さらには持続可能な町づくりの新たな出発(たびだち)の年となるよう心から願うものであります。
 私も町長就任から2年半となりましたが、初心を忘れることなく、町勢発展のためしっかりと行動していかなければと、決意を新たにしたところであります。
 ここにおられる議員各位並びに町民の皆様のご理解とご協力を心からお願い申し上げ、私の所信表明といたします。

平成22年3月4日
葛巻町長 鈴木 重男

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